コラム

Column

~壁をこわす。傾斜地のスキップフロア~

2020.06.25(木)

 

「傾斜地」建築士を悩ます地形の一つであるが、それと同時に平坦な地形では演出できない様な魅力を

発生させる事もあり、ウデを試されている地形でもある。

今回は、傾斜地にある家をリノベーションするというクライアントさんからのお話。

 

沖縄で住もうと思った。本当は海外でも良かったが、年中夏のような海もあり移動も楽な沖縄にしよう!

という感じで決めた。

仕事はネット環境さえあればどこでもできるから、自分の住みたいところがいいと前々から考えていた。

しばらく賃貸に住んでいたが、ちょうどいい家が見つかったので購入を考え始めた。

その前にもマンションのチラシは何度か見ていたが、マンションなら東京でも変わらないからと深くは

考えていなかった。

その時に出会ったのがこの高台の下にある家。

建物が道路より低い位置あり、奥の建物は更に下がっているが元々高台にあるので眺めが良い。

街も海も見渡せる。

子供たちの学校へは少し遠いけど、車があれば不便ではないしそれに中学までの間だけと思えば苦では

ないだろうと感じた。

広さ的にも申し分ないので、あとは自分好みに改装していけばいいと考えていた。

がここで思った以上に時間がかかった。なかなか間取りが決まらない。最初に相談した業者の設計では

現状とほとんど変わらない間取りだった。

こちらから希望する間取りの要望を伝えるも、何だかスッキリしない間取りだった。

話を聞くと、この家は傾斜地を利用した設計になっていて、更にその傾斜により建物の右側と左側が

別々の高さに分かれているので、間取りの変更がしづらく現状の間取りが一番適しているという事だった。

確かに少し変わった間取りで階段が多いなと思ったが、詳しい事はわからないので何とかなるだろうと

考えていた。

それから一旦考え、改装はせずにそのまま住もうかとも思ったが、いくつかの人に聞いてみようとネットから

情報を集めた。その中の一つで相談した会社から提案のあった間取りが目を惹いた。

部屋は階段でつながっているが、壁を取ってあるので一度に室内が見渡せて一体感があった。

その会社からは、構造に影響しない壁なので壊しても安全である事からこの提案をしたいという事だった。

図面だけではイメージしにくいからと、CGを描いて説明してくれたが何だか不思議な空間のようだった。

下からの目線では上に屋根裏部屋のような空間に見えて、上からの目線では吹き抜けから覗いているような

空間に見えた。

以前と変わらずに段差があり、階段もあるけれどとても一体感のある空間になっている。

自分の希望を満たす案はこれしかないと直感した。

早速この案でと思ったが又壁にぶつかった。大幅な予算オーバーだ。当初考えていた予算の約1.5倍だった。

やはり予算も大事なので他にも予算内で出来る提案も依頼したが、自分の希望を満たすものは難しかった。

そこでもう一度あの案をもらった会社と話しを進める事にした。出来るだけ予算に近づけるように削れる

ところは削るようにして、何とかあの一体感が出せるようにお願いをした。

その結果、子供部屋と寝室は最小限の工事にしたが、家族が集まり一番長くいる空間がキレイにできたので

満足している。

そこに並んである自分の仕事部屋も子供達が遊んでいる様子も見えて思い通りの空間となった。

傾斜地形にあわせて造られた家。それを今度は自分の希望に合わせてもらった。

この場所この地形そしてこの家でしか出せない魅力を引き出せた住まいとなった。

地形に合わせた建物のリノベーション。色々な制限があったがそれと同じように色々な人から情報を集め、

自分の希望を満たすことができた。

壁を壊す。建物だけでなく色々な意味の壁をこわしてできたリノベーションではないだろうか。

 

 

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